1: なまえないよぉ~ 2021/07/28(水) 07:51:11.22 _USER9
 いまやオリンピック中継にタレントは不可欠になった。この20年ほど、スポーツ中継の大きな変化は、タレントの役割の増大と、外国勢への興味の減少である。

 ウサイン・ボルト級の大スターはさすがに取り上げるが、アメリカ人なら誰でも知っている、リオデジャネイロ大会で女子体操4冠のシモーネ・バイルズの知名度は日本では低いと思わざるを得ない。要は、日本で有力な選手がいないと、その競技自体を取り上げる機会が少なくなってしまう。

 では、タレントがオリンピック中継に欠かせなくなってきたのはいつのことか? アトランタ・オリンピックの後に出されたNumber緊急増刊「百年の夢」において、山崎浩一氏は、タレントを使ったオリンピック中継に対して切れ味鋭い批評をしている。

 山崎氏の批評対象は、フジテレビで中継された柔道男子86kg級だ。バルセロナ大会に続き、2つ目の金メダルが期待された吉田秀彦の試合だ。スタジオの配置はこうなっていた。

「キャスターはDJの赤坂泰彦。解説者のほかに、ゲストとしてJOC広報アドバイザーのTOKIOとその弟分のV6を迎えていた」

 DJ赤坂がキャスターを務めていたことすら驚きだが、TOKIOが広報アドバイザーだったなんて、記憶にない。ところが、なんと吉田は初戦で一本負けを喫してしまう。これで地獄の扉が開いた。

「この不測の事態に出演者が動揺してしまったのは、視聴者の目にも明らかだった。番組は続けなければならないのに、TOKIOやV6では間がもたない。スタジオには寒々しい空気がただようばかり。それはこの国のオリンピック報道の貧しさを見事に象徴する光景だった」

自然に手をまわす山口達也
 TOKIOとV6のところを他のタレントに置き換えれば、山崎氏の視点は25年経った今も通じる。そして山崎氏はこの原稿をこう結ぶ。

「こんな貧しいオリンピック中継は、もういいかげん今回で終わりにしようではないか」

 そしてページに添えられた写真は、クレー射撃で入賞した吉良佳子とTOKIOの5人の記念写真だ。

 TOKIOのメンバーの表情がそれぞれのキャラクターを表しているが、いちばんアイドルっぽく笑い、吉良の腕に自然に手をまわしているのが――山口達也だ。

 このときは、まだタレントのオリンピック報道への登場は、違和感を持たれていたわけだが、四半世紀かけて日本のオリンピック報道は山崎氏の思惑とは反対の方向に進んでしまった(それにしても、最近は山崎氏の原稿を見ない。どうしたのだろう?)。

民放プロデューサー「日本が不振だと視聴率リスクがある」
 そしていま、アンダー30の世代は、

「オリンピック報道にタレントは当たり前」

 と思うようになってしまった。

 やり続ければ、それが常識となる。日本におけるテレビのオリンピック報道の変容は完了した。だが、シンプルな中継を記憶している世代から言っておきたい。いまの報道は必ずしも健全ではないと。 ではなぜ、そもそもスポーツ報道にタレントを使うのだろうか?

 私が民放のプロデューサーに聞いたのは、こんな内幕だ。

「スポーツ中継は、日本が不振だと視聴率が取れなくなるリスクがあるわけ。大会の後になって、『日本が弱くて』と言い訳しても局の上の方は聞いてくれませんよ。『なんか、やりようがあっただろ!』と言われるのがオチだって。だったら、あんたがやればいいじゃんと言いたいけど、『タレントを使ってテコ入れしたんですけどね』という言い訳が用意できる。その流れがずっと続いてきて、当たり前になった感じかな」

「どのテンションが正解?」戸惑うタレント
 私が不健全と書いたのは、今回のコロナ禍のオリンピックではタレントの起用が裏目に出る可能性があるからだ。

 私がテレビの報道番組に出演したとき、報道局の記者はこんなことを漏らしていた。

「今回のオリンピックばかりは、連日メダル獲得数の表を嬉々として出していいものか、悩んでいるところです」

 メダルの数と、新規陽性者数。ふたつの数字のバランスを制作者、記者はうかがいながら報道を続けている。こうした状況になると、タレントは分が悪い。タレントがもっとも力を発揮できる部分は、視聴者に「共感」を呼ぶことだ。タレントは盛り上げ、感動といったポジティブな感情の導火線となる。しかし、タレント本人も演出側も、今回ばかりはどのテンションが正解なのかが分からず、戸惑いながら放送を進行している様子がうかがえる。

(以下リンク先で)

number2021/07/27 11:05
https://number.bunshun.jp/articles/-/849053

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